例えば「セリフの言い方」の工夫に心血を注ぐ人がいらっしゃいますが、それだと相当に苦労を要すると思います。そして残念なことに、せっかく苦労して工夫を凝らしたつもりの「言い方」だったのに演出から「いや、そうじゃない」と却下されてしまうことも多いはずです。
まあ、演出もわかっていないことが多いのですが、それはただ単に形を意図的に変えたに過ぎないからなのです。
いわば服を変えることで自分のイメージを変えるようなことです。
そのように「言い方の変化」を付けられる人もいるにはいます。
そういう人は「引きだしが多い」とか「器用だ」とか「センスがある」とか「才能がある」というように評されることが多いでしょう。
でも、それが正当な演技だとみなされてしまうと、演技は「特別な人」だけができることになってしまいます。あるいは特別な訓練や勉強をした人だけのものになってしまうと思うのです。
しかし私は「演技など誰でもできる」と考えています。
演技は人間の行為、行動を現出することです。そう理解すれば「演技は行動の連続だ」ということになりはしませんか?
そこでここでは「セリフ表現」に関してサンプルを提示することにします。
いずれも「行動を変化させている」ことがお分かりいただけるだろうと思います。
お分かりいただけたであろうか…
動詞を変化させればひとつのセリフが様々な表情を見せ始めます。
「言い方の工夫」でダイナミックな変化はなかなか起きないのです。
表現をダイナミックにするには「そこにどのような動詞が現れるか」を論理的に読みとることが肝要です。