私はいつも「声優というのは俳優が声だけで演じている状態」と説明し、「独立した職業」として説明はしません。
つまり、元来「声(で演じている俳)優」という「状態」があるだけで、それは「俳優の仕事の仕方のひとつ」ということです。
これには異論はないと思うのですが、先日、この業界の先輩と話していて、どうも話がかみ合わないので、今回、整理のためにこの問題について説明しようと思います。
私がその先輩に、例によって「声優というのは俳優の仕事のひとつですから」ということを申しあげましたらその先輩は「いや、声優の人たちは俳優が声優の仕事をするのを嫌がるものだ」とおっしゃいます。
この言葉は私の「声優の定義」に基づいて言い換えますと、「俳優は俳優が俳優の仕事をするのを嫌がる」ということになってしまいます。どうもおかしい……(笑)
そこで先輩の認識を忖度しましたところ、やはりその先輩も「テレビなどの映像に顔出し出演しているのが俳優だ」という認識なのではないかと思われるのです。そして「そういう俳優が映像だけではなく舞台(これはおそらく商業舞台を指すと思いますが)に出ることもある」という認識なのではないでしょうか。
一方で、私が何人かの「声優と呼ばれている俳優」さんに話を聞いたとき、その人たちは確かに有名なアニメ映画制作のキャスティングに疑問を持っておられました。「最近は〈有名な俳優あるいはタレントである〉というだけでキャスティングしているのではないか」と言うのです。
ああ〜なるほど〜〜。わかります。
言われてみれば、実際「演技力より名前」でキャスティングしているのではないかと感じることがありますね。つまり「声による演技力」でキャスティングするのではなく「有名かどうか」でキャスティングしているのではないか、あるいは単なる「話題性」を優先させてキャストに入れているのではないかということをおっしゃっているのです。
ちなみにやはり私の知り合いである「声優」さんたちも、いずれかの劇団に所属して、舞台演劇はもちろんテレビや映画などにも出演していらっしゃるかたもおれば、劇団には所属してはいないがそういう演劇活動をなさっているかたも多くいらっしゃいます。
私はそういう現状を見て「声優というのは俳優の仕事のひとつ」と説明するわけですが、ひょっとすると私の先輩も含めて、世間では「俳優と声優は違う職業」と思われているのかも知れません。
いや、私は別に「声優」と「俳優」の線引きをしたり、そこに優劣をつけようとするものではありません。
あえて言うなら「声だけにしろ、顔も出すにしろ、結局は演技力の問題なのだ」と言いたいだけです(笑)
さて、ひとまずここまでで「俳優」の中に「声優」も含まれるという私の主張をご理解いただいた上で、それと「タレント」の違いについて述べましょう。
これについては和田勉という元NHKのドラマディレクターが明確な定義をしてくれています。
「タレントは何でもする人、俳優は何かをする人」
だそうです(笑)
タレントは「何でもする」のであって「何でもできる」のではありません。
このような定義に基づくと、タレントはやはり「仕事優先」で、俳優は「芸術優先」なのかも知れませんね〜。あ、いやいや決して芸術の優位を言っているのではありません。仕事はどれもそれなりに大変ですからね? 芸術は「儲からない」という点において大変です(笑)
私は何でも貪欲に「やる」!
という人はタレントに向いているかも知れませんね。
私は自分を表現したいのだ!
という人は俳優(声優)に向いているのかも知れません。