http://diamond.jp/articles/-/50826?page=1
著者の降旗(ふりはた)氏はノンフィクションライターだそうです。
「小保方さんどうしてるのかなぁ〜」という素朴な疑問からネット検索してこの記事に出会いました。
上記リンクで本文を読んでくださったらわかることなのですが、まず著者は「NHK大河ドラマの演技がヒドイ」というお話しから、最終的には過日の佐村河内氏や、ひょっとすると今回の小保方晴子氏の「ほうが、NHK大河ドラマに出ている俳優(女優)より演技がうまい」というオチをつけておられます。
佐村河内氏、小保方氏について私は論評する資格を持たないのですが、「NHK(だけじゃないけど)のドラマの演技」については一家言あります(笑)
記事に沿って私見を述べます。
彼女らの演技を見るにつけ、苛立ちを抑えきれないのは私だけなのだろうか。
いいえ、私もです。
大河出演の女優さんたちに共通しているのは、武家の嫁のくせに、身体がぐにゃぐにゃと動くことだ。それが実に気持ち悪く、演技に気高さというものがない。私はそれが気になって仕方がないのである。
「演技に気高さというものがない」…はい、私もそう思います。
この時代の武家は、常に背筋をぴしっと伸ばし、端正に佇んでいたと思うのだが、台詞をひとつ言うごとに彼女たちは顔を上下させ、身体をぐにゃぐにゃとくねらせる。いちばん身体が揺れるのは○○ちゃんだが、皆さまのNHKの演出家はそういう演技指導をしているのだろうか?
演出家が演技指導をするのではないと思いますが、俳優のほうが演出の「望む演技の形」を忖度してやっている可能性が高いと思います。またテレビドラマの多くでそういう演技を展開しているので、俳優もその「傾向と対策」で演技しているのだろうと思います。「アニメの実写版」です。
ただ、「誰も戦国時代を見た人なんていねぇんだからいいじゃ〜ん」という開き直りが制作者側にはあるでしょうね。そう開き直られたら反論はむずかしい(笑)
さらに気になるのは、武家の嫁が歯を見せて笑う場面だ。
○○ちゃんなんて大口を開けて、きれいな歯がしっかりと見える。××さんも町娘や農民のように笑う。そんな笑い方を武家のおなごは“はしたない”としつけられているはずなのだが、私が間違っているのかな。
「はしたない」という「恥の美学」は日本文化の基本だったと思いますが、ウォークマンができたころ、今から40年ほど前にその美学は廃絶されたかも知れません。
おそらく平安時代の宮中の女性などは扇で顔を隠していたと思われるので、きっと「大口を開けて笑う習慣」は戦国時代の武家にもなかったのではないかと思います。
しかし、ドラマに出てくる戦国時代の人が大口を開けて笑わないと現代人の目には「ヘンだ」と映るかも知れません。NHKとしては「史実は『歴史秘話ヒストリア』で! ドラマは娯楽だからわかりやすさ優先なの!」という制作姿勢ではないでしょうか?
これもおおざっぱに言えば「アニメの実写版」です。
ついでに言うと「大口開けて笑ってなかったって言いきれんの? あん?」と言われると反証はむずかしい。
△△さんはあえて秀吉との滑稽なやり取りを演じて……、やめた。これ以上は言わないことにする。おばさんが無理して女子高生を演じているみたいだなんて言ったらきっと誰かにブン殴られる。おねは落ち着きのない女だった、という設定なら名演技かもしれませんが。
これも「演出の望む演技」および「演出の望む脚本」を踏まえた結果だと思います。まあ、NHKだけではありませんが、今の日本のテレビドラマの多くは何度も言いますが「アニメの実写版」ですね。
どーして武士とその嫁は熱い抱擁を交わすのか、である。悲しいことがあれば夫婦で抱擁、出陣する夫に妻が抱擁、無事に帰還すればまた抱擁……、まるでトレンディドラマみたいではないか。戦国武将ってのは、事あるごとに女房を抱きしめていたんですか?昭和一桁の男だって軽々しく抱擁なんかしなかったのに、乱世の男たちは違うようです。
これも「恥の美学」からするとおかしな行動ですね。
実は私、NHKを始め、日本のテレビドラマはアラ探し以外では見ていないのでわからないのですが、その「抱擁」演技は衆人環視の中で行われるのでしょうか? だとするとそれは怪しからん演技・演出です(笑)
ですが、やはり「昭和一桁世代は、そりゃ抱擁なんかしないよ〜。でも戦国時代、乱世ではやってたかも知んねぇじゃん?」と言われてしまえばそれまでです(笑)
演出というのは演劇では観客の代わり、テレビでは視聴者の代わり、というのが私の考えですが、おそらくNHKを始め、今のテレビドラマの演出は「アニメ世代」なのでしょう。
無理な興奮、無駄な言葉、斑のある動きが好きなのかも知れません。「それが演技だ」と思い込んでいるのかも知れませんね。また仕事をもらう俳優もそういう「傾向」に「対策」を立てるので、どのドラマもアニメの実写版になっていきます。
ノリと勢いと雰囲気だけでやる演技は、演技そのものを衰退させると思いますし、それは俳優にとって自らの存在意義をおとしめることになるのではないかと愚考します。
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