以上はサンプルボイス原稿の例です。
サンプルボイスは「音声」のみなので、全部ひらがなで書いてみました。
【映像的にならないように気を付ける】
例文を読んでどんな状況、情景なのかすぐに想像できますか?
「うわぁ、これいいな〜。」→「これ」が何なのかわかりません。
「このあいだみたときはなかったんだよね〜。」→見た場所がわかりません。
「あ、でもこれ…こん?」→「こん」と聴いてすぐに色の「紺」だとわからないかも知れません。
「すみませ〜ん。」→ここへ来てやっと「何かのお店なのだろう」と推察されます。
「これすごくいいとおもうんですけど、」→やはり「これ」が何なのかまだわかりません。
「くろってありますか?」→ここでたぶん先ほどの「こん」が「紺」であることが明確にわかります。
「え? さいごのひとつがのこってるんですか?」→相手の発言を説明しています。
セリフを書いた人には「映像」(場面)が頭に出来あがっているので違和感はないと思いますが、「音声」だけでは第三者にはなかなか想像できません。そうなると今度は「説明的」になってきます。
【説明的にならないように気を付ける】
「今日は天気もいいし、久しぶりにウィンドウショッピングでもするか。あれ? うわぁ、このブラウスいいな〜。このあいだこのお店の前を通ったときはなかったんだよね〜。あ、でもこれ…紺色みたい。紺色じゃなぁ〜。あ、店員さんに訊いて見よっと…。すみませ〜ん。このブラウスすごくいいと思うんですけど、同じデザインで黒のありますか? え? 最後の一枚が残ってるんですか?! それください!」
いろいろわかりやすく説明してくれています。
これだと場面を想像しやすいですね。でも、まだるっこしい(笑)
どれも「言うな」という内容ではありませんが、「今日は天気もいいし、」から「店員さんに訊いて見よっと…。」までは「心の中の声(モノローグ)」ですよね? わざわざ口に出すことではありません。
音声のみの表現である「朗読」や「ラジオドラマ」などは映像的にならないように、かと言ってできるだけ説明的にならないように注意したほうがいいと思います。
ご自分で書いたサンプルボイス原稿、中でも「セリフ」については「映像がないと第三者に場面を想像させられないかどうか」ということと、「わからせようと説明していないか」ということをチェックしましょう。
それらの観点で例文を改稿してみます。
「すみません〜。あのぉ、お店の前に出されてる青いブラウスなんですけど、何日か前にはあれの黒があったように思うんです。あれって…。あ、まだ、あるんですか? 良かったぁ! ああ、これです、これです! え? 黒はこれ1枚っきり? ラッキー! じゃ、これください!」
冒頭から店員との会話にしてみました。もちろん店員さんのセリフがあって掛け合いができれば自然になりますが、そうもいかないのでいささか説明的なところも残っています。
いくつかの改稿のポイントを挙げておきます。
●説明的になることを避けるため、モノローグを入れないようにしました。
●「紺」は音読みです。音声のみの表現ではできるだけ音読みを避けたほうがわかりやすいので、ブラウスの色は「青」(訓読み)にしました。
●前半の不安感(黒いブラウスがあるかどうか)から、大きく喜びの表現に転じるように構成しました。
●音声に現れない店員の言葉を、発話者の言葉から想像できるように心がけました。
●「それ」という指示語では対象が曖昧になると思うので、目の前に現物のブラウスがあって「これ」を使う状況にしました。
次回は「映像的」「説明的」の余談をいたします(笑)
わざわざコメントをお寄せくださりありがとうございました!