原則として私は演劇を観ません(笑)
映画や野球も、もっぱらテレビで観ます。
音楽に興味がないのでコンサートにも絶対行きません。
そういう「ライブ」ものを観ないのは、お金がないというのもその理由のひとつですが、特に演劇などのパフォーマンス系では失望させられることが多いからです。
でも今回は仕事上の付き合いもあって観劇に赴きました。
内容的なことを書くと差し障りがあるのでここでは書きませんが、一般的に世間の演劇で展開されている「演出上の問題」についてだけ書いておこうと思います。
今回の作品ではセリフを「日常的」にやりとりしていました。
日常(ナチュラル)と様式(スタイル)は演劇の演技表現の代表的なものです。
様式というのは「歌舞伎」「文楽」「能」「ミュージカル」など、いわゆる「非日常的な言動表現」を用いるものです。
今回の舞台は「ストレートプレイ」と呼ばれるものですから、上記のような「様式」は原則として使っていません。そういう意味においてのみ演出は間違っていないと思います。
ただ、日本の「映画」や「ドラマ」などの多くで展開されている演技のトーンは「アニメの実写版」みたいなのが多いのですが、今回の演劇もその「アニメの実写版」と「ナチュラルな掛け合い」を中心にしていたように思います。
「アニメの実写版」は非現実的です。同時に「ナチュラルな掛け合い」は言葉の訴求力が弱いのです。
演出担当は「この演劇作品は非現実的な表現と現実的な表現をミックスさせた」と言うのでしょうけれど、実際にはやはり「非現実的ウソっぽさと、訴求力の弱さ」が露呈された舞台だったと思います。
そもそも一人の人間が脚本と演出を兼務していて、しかも露出度の高い役で出演するというシステムがダメですね(笑)
ナチュラル(日常)とリアル(劇的現実)を混同してはいけません。
その混同が起こると、どうなるか?
やけに巻きでポンポンとセリフをやりとりしていることになります(笑)
この「巻きでポンポン」には「テンポというものを誤解している」という問題をはらんでいます。
演技の現場ではよく「テンポを上げて!」と演出されることがあります。
しかし、テンポというのは演技の場合、セリフのスピードや一連の動きのスピードではないのです。
結論的に言いますと、テンポとは「心を動かすきっかけの早さ」です。
たとえば私たちは誰かと会話しているとき、相手の話の途中で「ああ、そうかそうか」と相槌を打つことがあります。これが「心を動かすきっかけ」が早いということです。
つまり相手の話を聴き終えずとも内容が理解できて(=心が動いて)相槌を打つのです。
これこそ「ナチュラル」です。
でも、実際の会話(日常的会話、ナチュラルな会話)では、これで成立しますが、演劇の場合、第三者である観客にふたりのやりとりの内容を理解させるには無理があるかも知れません。
そういうナチュラルな会話で観客に理解されるかどうかを判断するのも演出の仕事です。
この点において、今回の演劇では「演出がちゃんと指示できていない」と断じます。
次に感じた問題は「発声」の問題です。
出演なさっていた俳優の皆さんは「大きな声」を出しておられました。さすがに有名どころのプロですね。
しかし、「舞台的発声」ができていないと思われます。
具体的に言うと、「子音」が弱いように思われました。これは俳優の「発声技術」の問題です。
母音と違って「子音」は瞬間的なノイズです。それをしっかり客席に聴かせるには呼吸と共鳴を向上させないといけません。
また、もちろんそれでセリフがちゃんと客観的に聴こえるかどうかを判断するのも演出の仕事です。
発声技術の直接的な問題ではなく、ある種「段取り上」の問題になるのでしょうけれど、出演者が後ろ向き、あるいは横向きの状態でセリフを言っているケースも多くありました。
もちろん「後ろ向きや横向きでセリフを言うな」ということではありません。
しかし、そういう場合は若干、声圧を上げないと声の音量バランスが悪くなります。
本当に有能な演出や俳優は、その時々の状況に応じた最善策を模索し、実行できるものだと思います。
●ホールの状態(舞台の広さ、機構、音の響き、温度)
●観客の入り状況やその日の反応
●観客の服装(冬は衣類が分厚いので音や声を吸ってしまう)
●ホールの照明や音響機材の特性
●俳優のコンディション
さまざまな状況を考慮に入れて演出しないといけませんね(笑)
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