まあ、案の定なのですが、俳優が何を言っているのか、さらには「何をやっているのか」わかりません(笑)
これは発音や声量の問題ではなく、意味と速さの問題です。
まずセリフが表現する「意味」が明確ではない。ある種、これは俳優の読解力および表現力に問題があるのかも知れませんが、それを指摘し、改善させるのは演出の役目です。
次にセリフの口調の速さの問題です。
私たちは日常会話においても相手があまりに早口だと意味が理解できません。特に私などは頭が良くないので、ゆっくりと、しかも意味をちゃんと伝えてくれないとさっぱり理解できません。

ましてや演劇やドラマは「初めてその話を聴く(見る)」人がほとんどなのですから、ちゃんと相手(観客)が「この話を理解できるかどうか」を考えながら進めないといけないでしょう。その「観客」の代わりをするのが「演出」です。
ところが厄介なことに演出を含めてその作品に関わる人間は、すでに何度も台本を読んでいて内容がわかっているので「これで相手(観客)もわかるだろう」と思い込みがちなのです。
その結果「テンポ〜テンポ〜」と要求し、俳優は早口になってしまうのです。
こうして演劇の観客はいつも作品に置き去りにされてしまい、最終的に「演劇はつまらない


作品におけるすべての表現責任者は「演出担当」です。

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「テンポの意味を取り違えている」
演出はよく「テンポを上げて」というようなオーダーをします。それを聞くと「早口」になる人がいます。
それは単に「巻き」ということであり、本来の「テンポ」ではありません。ましてや朗読やラジオドラマなどでは、原則として音声でしか情景を描写できないので、あまり早口にならないほうがいいでしょう。特に冒頭からしばらくはあまりに早口だと内容が理解されず、観客を置き去りにしかねません。
演技における「テンポ」というのは、「早口」ではなく行動を起こすきっかけの早さ、つまり「速さ」ではなく「早さ(早期)」なのです。
例えば、相手のセリフを聴き終わってから心を動かすのではなく、「聴いている最中に心を動かす」と、自分のセリフや行為が早期に展開され始めるということになり、それこそが「テンポを上げる」ということなのです。
「相手のセリフの意味をよりしっかり聴け」ば、テンポを上げることが可能です。
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